沖縄の音環境改善へ向けた実証実験の成功
沖縄県嘉手納町において、ピクシーダストテクノロジーズ(以下、PxDT)と福地組は、音響メタマテリアル技術「iwasemi™」を活用した実証実験を実施し、戦闘機騒音やオフィス騒音の低減に成功しました。この実証は、地域における音の課題解決に向けた重要な進展を意味しています。
実証実験の背景
沖縄では、米軍基地の活動による戦闘機の騒音が周辺住民の生活環境に影響を及ぼすことが長年の課題となってきました。特に、騒音の影響を受ける地域では、住環境の改善が切実なニーズとして求められています。さらに、オフィスにおいても会話のしづらさや反響が問題視されている中で、従来の対策は遮音材を用いた物理的手法が中心でしたが、コストやデザイン性、通気性が両立できないという課題が存在していました。
このような背景を受けて、PxDTと福地組は、素材の選定に依存せずに音を制御できる技術、つまり音響メタマテリアル技術「iwasemi™」を用いた音環境の改善に挑戦しました。
実証結果の概要
1. 戦闘機騒音の低減
実証実験では、嘉手納町の福地組オフィスの外部で、戦闘機が離着陸する際の低周波を含む騒音について測定が行われました。その結果、従来の構造と比較して約8デシベルの音圧低減が確認されました。この結果は、音響メタマテリアル構造が通気性を保持しながら騒音を効果的に減少させる可能性を示しています。
2. オフィス内の残響時間の短縮
さらに、福地組のオフィス内に設置されたiwasemi™吸音パネルによる実証では、会話が主要な音区間である500〜1,000Hzにおいて、平均残響時間が1.28秒から1.05秒に短縮され、約18%の削減を達成しました。この変化は「ざわざわしたカフェから静かな図書館へ」変わったかのような体感をもたらしました。
今後の展望
実証の成果を受け、PxDTは音響メタマテリアル技術のさらなる応用を目指しています。建築現場や都市空間での音に関する新たなスタンダードを築くため、パートナー企業との連携を強化し、音への新たなアプローチを社会に実装していく考えです。
PxDTのiwasemi事業部長、五島隆允氏は「今回の実証実験で得た成果は、通気性やデザイン性を損ねることなく音環境を改善できる新しい技術の確立を示した」と述べています。今回の実施が他地域や他業種にも波及し、音環境の質を向上させる一助となることが期待されます。
沖縄におけるこの取り組みは、地域住民にとっても大きな希望となるものであり、今後の進展から目が離せません。