名桜大学とヘルスケアテクノロジーズが認知症研究を推進
沖縄県名護市にある公立大学法人名桜大学と、ソフトバンクの子会社であるヘルスケアテクノロジーズ株式会社が新たに共同研究契約を結び、AI技術を駆使して認知症の早期発見および予防に向けた取り組みを開始しました。この研究の目的は、認知機能評価を行う新たなシステムを開発し、積極的な介入を通じて認知症患者の増加を抑制することです。
高齢化社会における認知症の現状
日本では高齢化が進み、2025年には認知症患者が約472万人に達すると予測されています。2060年にはその数が645万人弱にまで増える見込みです。認知症にかかる医療・介護費用は年間約11.2兆円に達し、家庭でのケアにかかるコストは年間380万円にのぼるというデータも存在します。こうした背景から、認知症の早期発見と予防が必要とされています。
加えて、厚生労働省の調査から、軽度認知障害を持つ高齢者の10〜30%が毎年認知症に進行するリスクがあることが判明。にもかかわらず、現在の診断手法は多忙な通院を伴い、身体的および精神的な負担が大きいため、多くの人々が認知機能検査を受けるのをためらっています。
新たなAI技術の開発
本研究では、ヘルスケアテクノロジーズが提供するヘルスケアアプリ「HELPO」を利用し、スマートフォンから歩行データを収集することで、日常的に認知機能を評価します。これにより、身体的な負担を軽減しつつ、ユーザーの日常生活の中でスムーズに健康管理を行える仕組みを構築します。歩行データの利用に関しては、事前に同意を得た利用者に限定されます。
名桜大学は、また別のプロジェクト「やんばる版プロジェクト健診」を通じて、沖縄県在住の対象者から歩行データを取得し、そのデータをもとに認知機能を評価する新たなAIモデルの開発を進めています。この新システムの完成により、早期発見と介入が可能になり、患者の負担を軽減し、医療費の抑制へも寄与することが期待されます。
研究に寄せる期待
名桜大学の学長砂川昌範は、沖縄県の平均寿命や健康寿命向上に向けての取り組みを続けており、2025年度から新たな研究プロジェクトを通じて11の疾患に対する予兆モデルの開発を目指す計画を披露しました。このプロジェクトでは、AI技術を用いて未来の疾病を予測し、「病気予報」として活用することを視野に入れています。
ヘルスケアテクノロジーズ社の大石怜史社長は、高齢化が進む日本において、本研究が日常のデータから認知機能を予測する新しいAIを構築する一助となると述べています。認知症の早期発見を通じて、健康な生活を実現する社会への道を切り拓くことが目指されています。
まとめ
名桜大学とヘルスケアテクノロジーズの共同研究は、沖縄から全国へ、そして世界へと波及する可能性を秘めています。AI技術を活用したこの新たなアプローチが、認知症予防の新たなスタンダードとなることを期待しつつ、今後の成果に目が離せません。