沖縄南部の救急体制革新「NSER mobile」実証開始
2025年6月10日、沖縄県南部の4つの消防本部、糸満市、東部消防組合、島尻消防組合、豊見城市が新しい救急医療情報システム「NSER mobile」の実証事業に取り組むことが発表されました。このプロジェクトは、救急隊と医療機関の情報連携を強化し、搬送時間の短縮や業務負担の軽減を目指しています。
背景にある地域の課題
沖縄南部では、2024年の救急出動件数が16,613件に達する見込みで、これは2022年の12,744件からの増加を示しています。地域の高齢化率が25%を超え、国内外からの観光客も多いため、救急需要が年々高まっています。一方で、搬送される患者の約50%が軽症であるため、重症患者への対応が後手に回る事例も増えています。この現状を改善するため、沖縄南部ではさまざまな取り組みが行われてきました。
これまでの取り組みには、軽症・重症対応病院の機能分化や、救急相談ダイヤル「#7119」の活用があり、救急搬送改善に向けた努力が続いています。また、那覇市では、「Nser-NET」というシステムを導入し、救急出動体制の効率化を図っています。
「NSER mobile」の実証概要
実証事業では、以下の消防本部が対象となります:
- - 糸満市消防本部(実搬送)
- - 東部消防組合消防本部(実搬送)
- - 島尻消防組合消防本部(デモ検証)
- - 豊見城市消防本部(デモ検証)
主な検証項目には、応需開始から病院決定までの時間短縮効果、救急隊と医療機関間のリアルタイム情報連携、医療機関内での情報受信と患者受入れの効率化、また、統一システム運用による圏域全体の最適化などがあります。これにより、現場での操作性やデータの活用価値も向上し、救急業務の負担軽減に繋がることが期待されています。
今後の展望
今回の実証結果をもとに、各消防本部や医療機関からのフィードバックを収集し、システム要件の精査を行うことで、沖縄県南部での本格導入を進めていく方針です。これにより、より迅速かつ効率的な救急医療の提供が実現することが期待されています。
「NSER mobile」の特徴
TXP Medicalが開発した「NSER mobile」は、救急隊と病院間の連絡を完全にデジタル化し、救急搬送の可視化と適正化を実現する次世代のプラットフォームです。事案情報や病歴、バイタルサインなどの重要情報を共有できるほか、救急医療におけるデータプラットフォームとしての機能も備えています。これにより、患者の救急搬送から治療・検査・転院までのプロセスを効率化し、エビデンスに基づく政策立案を推進します。
「NSER mobile」は、搬送、受入れ、記録、分析の全ての過程を支えることができるため、「誰一人取り残さない」救急医療の実現を目指しています。このシステムは、国際的な情報セキュリティの基準を満たしており、信頼性の高い運用を実現しています。
沖縄南部の救急体制がどのように進化するのか、今後の展開に注目です。